フルリノベーションといえば、大胆な間取りの変更や各部屋で建材(天井材、床材、壁材など)を意のままに使うなど“わがままな”選択ができる魅力があります。一方で、計画上では完璧だ!と思った素材の取り合わせが、いざ完成という段階で妙に違和感が生じて…。そんな想定外のリスクは、意外と少なくありません。
今回、Hさん夫婦が創り上げた93㎡の空間には、素材同士の美しいマッチングと整ったデザインが共存しています。まずはフローリング。もっとも広さを占めるリビングゾーンに特徴的な寄せ木仕様の床材。また、直接アクセスするキッチンは床を一段上げステージ状とし、グレーのタイルを採用。高さ違いによる両空間の視覚的な境界が生まれたことで、床の色調は系統を合わせて統一感を引き出せます。キッチン壁面に配したヴィンテージタイル(白)は、統一感だけを是としないHさん夫婦の上級テクニック。一方、ドレッシングルームのフロアタイルと造作棚(壁)の程よいコントラストも秀逸です。アシンメトリーなストライプ状のタイルがアクセントとなり、他のシンプルな設備とも調和しました。
また、寝室はベッドサイズに合わせ、ピンクベージュ×マットグリーンの2トーンで壁面と天井を構成。一連の空間をとおして感じられるホテルライクな素材選びや配色。夫婦生活にあって物を極力抱え込まない(持たない)ライフスタイルを大切にするというHさん。平米数からすると、パントリーや収納スペースが複数あっても不思議ではありませんが、あえて設けないセンスこそ、すべての部屋に余白を感じられる理由かもしれません。
スケールの大きなフルリノベーションにこそ注意したい素材や色選び。Hさん夫婦宅の実例から、あなたはどんな「組み合わせ」を選びますか?
インダストリアルなパーツとシックな木材が織りなすダンディな空間。お酒を嗜むGさん(男性)にとってキッチンカウンターに象徴されるバーのような一角をつくることは想定プランのひとつでした。
腰上ほどの高さに設定した壁面のタイルも、よく見るとレンガ一枚一枚で異なる色味をランダムに配置し、モダンなムードを際立たせています。また、高さのある造作カウンターの天板は、タモ材の表面にブラウンオイルを重ねて塗装。リビング全体におよぶ濃い色味のウォルナットフローリングとの相性も良好です。
このリビング、キッチンには、その他「要素足し」として、四方の壁面に接する床の組み方(板の方向が異なる)を変えることで“縁取り”を設け、さり気ない装飾性に加えて、空間に奥行きをもたせる工夫を施しています。また、キッチン頭上に設けた段違いの天井板(吊り天井)をダークボルドー色で構成。コンクリートスラブ(躯体あらわし天井)部分における単なるアクセントではなく、その色味はあくまで空間全体と同調するものを選んでいます。
限られるリビングスペースにおいて、最大限の開放感を得るためには、天井や壁、そして床に、それぞれ「高さ」、「色味」、「つくり」に配慮する。その重要性を、Gさんの空間から学ぶことができます。
今回は、コードスタイルが従来手がける様ざまな施工実例をもとに、黒タイルで構成するドレッシングルームや衣類収納の造作も実現。「アイアン×ウッド」による定番のヴィンテージ様式を、施主さんが掲げる世界観と居住イメージにそって調整した本施工。コードスタイルの原点ともいえるスタイルが完成しました。
大学図書館の司書としてお勤めのSさん(女性)が、終の住処として選んだ約18坪の空間には、いたるところにご本人の人生観が凝縮されています。
とりわけリビングのつくりはその象徴です。以前まで和室だった角の小部屋を現在のダイニングとひと続きにし、広さを確保。同時にリビング窓側の壁面をつかった本棚を造作しました。長年にわたり図書の仕事に携わってきたとあり、文庫小説や児童書の他、アート、インテリア関連書籍も数多く所有するSさん。ひとたび家に帰ってもなお「本」はご自身の生活において、もはや欠かすことのできない存在です。
また、棚の造作にあたっては、部屋の改装にも勝る熱量でコードスタイルの設計担当者がご本人の本の配置イメージに合わせた幅や高さ、奥行きを設定。さらに、壁の窓、そこから望む緑の景色を生かした大胆な形状もシンボリックな仕上りに。窓枠を囲う本が、まるでアートフレームの役割を果たしているような空間は、静かにページをめくる愛おしいひとときのために、Sさんたっての希望から実現しました。
また、いずれ健康や体力の衰えとともに心配が募る部屋間の移動を容易に行えるよう、幅にゆとりをもたせた通路づくりやフラットな区画(バリアフリー)はじめ、スイッチ、キッチン台、ドアハンドル、鏡などのすべてを、低位置に設計した点も、将来を見据えたSさんの思いがこもっています。
「極力ミニマルに」。シンプルという捉え方とも異なるオーダーとなった今回のプロジェクト。明かりも装飾も無駄なものは省き、一連の生活動作が美しく完結する動線づくりを中心に、普段の施工で滅多に使用しない再生材の利用などにより、空間(質感)と所有物の善きギャップが生まれました。それはもちろん“Sさん文庫(=本棚)”にも表れています。
建設会社を営むお父様が建てたつくりのいい一軒家。娘であるAさんは、自身の結婚を機にこの家を譲り受けることになりました。
従来、自分が住み続けてきた実家にどう手を加えていくか。また、お酒や洋服、車など多趣味なご主人の意見も踏まえリノベーションに着手しました。
今回のケースの場合、土地代を要しない分、大胆な間取りの変更やデザインの追加が可能とあり、夫婦それぞれの好みをバランスよく配分できることは大きなポイントでした。とはいえ、空間全体の雰囲気に影響する床や壁は色数を最小限にし、素材感のまとまりを重要視。
一方、共働きのライフスタイルに合わせ、家事も効率的に回せるよう、隅の壁側にあったキッチンはリビング側に向きを変え、パントリーを備える広々としたスペースを確保。洗面室やトイレなどの水回りも同じく面積を拡張しました。
開放感もさることながら、T様邸らしさを引き立てる最大の魅力は、床材やタイルづかいの豊富さです。とりわけ床材はリビングに敷き詰めたデザイン性の高いヘリンボーンに加え、ゲストスペースにと設けた一階洋室にはヘキサゴンパーケットを採用。薄いトーンの緑の壁とも絶妙な相性を感じます。
さらに、キッチンや洗面所、トイレで異なるタイルの他、元々コードスタイルのインダストリアルな施工が好みだったご主人の要望によって、リビング一角の共有デスクゾーンは壁面をレンガでアレンジ。エントランスのシューズボックスや2階に設けたウォークインクローゼットを含め、互いの生活品や趣味道具を美しく整頓できるオリジナルの造作物の新設も夫婦の妥協なきこだわりといえます。
昨今、家で過ごす時間の重要性が高まるだけに、T邸には「自分にとって快適な空間とは何か」を見つめ直すヒントが隠れています。
緩やかな丘陵地がもたらす見晴らしのいい庭付きの立地。Iさん夫婦が購入した一軒家もそんな開放感あふれる場所にあります。
ご夫婦はバイク販売店に勤務する傍ら、音楽の趣味をもつご主人と会社員の奥様。効率的な家事動線の確保に加え、3歳の子どもを育てる親としての観点を重視したリノベーションは、日常生活の大半が一階で完結する使い勝手のいい間取りに凝縮されています。
その好例が、キッチンの位置。以前まで空間の隅、それも壁側に配置されていたキッチンの向きを変え、リビング側に移設。元のスペースをウォークインクローゼットにし、その場からバスルーム(脱衣所含む)までダイレクトにアクセスできるようにしました。
また「掃除のしやすさ」がテーマの根底にあることから、入り組んだ部屋は少なく、直線的な移動がかなう空間配置も特長です。かつて2部屋に分かれていたリビングも、それまでの和室を取り払い拡張。その分縦に伸びた空間には、あえて立ち上がり壁をつくり、リビング側の壁面にTVを掛けたり、壁と一体化する棚を造作。また、緑のクロスを張った壁裏の小空間をご主人所有のギターを飾るスペースに活用しました。
デザインが先行しがちなリノベーションにおいて、機能を優先する夫婦の工夫は他にも。2階建て特有の階段下にはキッズスペースを設け、キッチンから子どもの様子がうかがえます。さらに、親類の訪問にも対処できる大部屋を2階に確保。子どもの成長に合わせ、ゆくゆくは子ども部屋として利用する可能性を残しました。元からあった階段にオイル塗装を施したり、珪藻土と壁紙を使い分けたりとスマートに予算を抑える工夫も参考にしたい実例です。
突出したデザインや色味を用いずとも生まれるパーソナルな空間。新居での生活は一カ月。広い庭に注ぎ込む風を、作り替えたでテラスで味わう初めての夏も一家の密かな楽しみです。
南区の閑静な住宅地に建つ輸入住宅。Oさん夫婦は子どもの誕生を機に同物件を購入しました。今回、家族団らんのスペースに加え、IT関連の仕事に従事するご主人と、出産後も在宅で仕事を担う奥様が、互いの仕事部屋を確保することを前提に、1階の大部分と2階の一部分にリノベーションを施しました。
家族全員で寛ぐリビングは、従来和室のあった6帖弱のスペースを取り込み面積を拡張。窓に向かってワイドに広がる空間をリビングダイニングとキッチンに変更しました。また、ここで着目したいのは空間上のメリハリ。
通常、キッチンとリビングは同じ床材で構成する施工例も少なくありませんが、Oさん夫婦はキッチンの床を2色のタイル仕様、リビングにはオーク材を採用するなど、明確に分けました。“外国のバー”を思わせるキッチンの白黒タイルに合わせ、カップボードも造作。加えてパントリーを設置した理由は、料理のしやすさ以上に「テンションが上がるかどうか」重要でした。
一方、リビング全体の雰囲気を決定づけるグレイッシュな緑の壁はコードスタイルが工事現場に用意したカラーサンプルを比較し決定。さらに、壁掛けテレビを設置するために、テレビ面上部は壁をふかし、あえてさがり天井を作った部分にアクセントとなる古材を貼り合わせ。この“隠れ素材”は1階トイレの壁にも採用するほど、夫婦の“テンション”を刺激する要素です。
同じく素材という点では、インディゴ染めを施したデニム風フロアタイルのドッレシングルーム(洗面・脱衣所)も大胆な印象に。外観から1階そして2階。塗装のみでシンプルに仕上げた箇所もあれば、将来の家族構成を見越し、大幅に手を加えなかった2階の部屋など、作り替えの可能性を残したスマートなリノベーション事例としても、Oさん邸には多くのヒントがあります。
玄関からリビングへと続く長い廊下。元は靴を脱ぐやいなや扉が迫る窮屈な間取りでしたが、その迫り出したリビングの一部を取り除いたことで、真っ直ぐ開放的な動線が生まれました。
衣装持ちかつキャンプを趣味にもつKさん一家にとって、今回のリノベーションにおける「収納力」は譲れないポイントでした。縦に延ばした廊下の左側にあたるトの字型の“ファミリークローク”がその象徴的スペースです。
服や道具を使用頻度で棲み分け、架けたり、置いたり、吊るしたりできるポールや可動式の棚などを効果的に造作しました。また、この10帖はあろうかという収納空間により、他の部屋がこぢんまりしたかというとそうではありません。
旧間取りを一から見直し、和室とリビングを一体化することによって、従来以上に広いリビングダイニングを再構成。奥様たっての希望で設置したステンレス製のカウンター(シンク)から、リビングを一望できる視界を確保するため、キッチンの向きも大幅に変更しました。
一方、建具や部位の素材と配色は互いの調和をテーマに、壁は淡グレーのカラー珪藻土、床にはオーク材を採用し、ほぼモノトーンの色調でフィニッシュ。リビングに燦々と自然光が注ぐ風景を目の当たりにすると、空間に色を使いすぎないことによるプラス効果を感じとれます。
他方、Kさん夫婦のこだわりは脱衣・洗面スペースにも。旧来とほぼ変わらない面積とはいえ、隣り合う新設クロークの特殊な間取りで生じたデッドスペースにL字型の造作棚を設置。部分的にあしらったアイボリーのタイルにもさり気ないセンスが光ります。
家人の理想空間を合理的かつ大胆な「区割り」で実現した今回のフルリノベーション。家族の新しい生活は今年スタートを切ったばかりです。
スノーボードに読書、料理、TVゲーム…。「多趣味」という言葉がしっくりくる夫婦の住空間は、どの一角を切り取っても妥協を感じさせません。エントランスを大幅に拡張し、長い付板で造作した収納棚を大胆に設えたのも、ボードに加え、何かと大きな種々の生活アイテムを美しく仕舞うための工夫です。また、存在感のあるスクエア型のブラックタイル(ヴィンテージ加工)もエントランスの開放感に一役買っています。
他方、メイン空間となるリビングはというと、家人のこだわりがいっそう詰まっています。縦に延びる空間と奥のダイニングまでの動線に呼応するかのように、フロア中央部(サイド)のキッチンを境に床板の“向き”を変えたのも特長です。まるで“く”の字を描いたようなフローリング構成は落ち着いた無垢のオークで統一。キッチンの立ち上がりに採用したマットなモルタルの質感とも抜群の相性です。夫婦は入口側につくったコンパクトなスペースにソファとTVを置き、読書やゲームに興じます。また、奥側のダイニングは珪藻土の壁を一段凹(くぼ)ませ、ブルーグレーを塗装。空間全体の調和をはかりながらも、シンプルな印象が突出せぬよう、部分色でメリハリをつけました。
インテリア照明を仕事にする男性(夫)の希望で実現したレールやペンダントの明かりもまた、穏やかな時間を2人にもたらします。広さを最大限に活用した自由な空間配置の魅力。フルリノベーションの新たな“基準”がこの家に隠れています。
開放的なリビングの壁から突き出る木製のステップ。モダンな飾り棚のようにも見えるその正体は、家人がこよなく愛する猫のための“アスレチック”です。今回のリノベーションにおいて一番大切にしたポイントは「間取り優先」。Nさん夫婦が、アクティブな日常を送るために選んだ立地は、車や自転車での移動もしやすい南区でした。
また、ウォークインクローゼットや土間、広々とした水回りスペースの確保など次々に溢れ出す空間イメージをかなえるために、90平米の部屋を選択。当初検討していた部屋の広さが70〜80平米ですから、大幅なスケール変更でした。一方、可動パーテーションを開け放ったリビングと直結するキッチンやフードカウンターも家人のこだわりのひとつ。時には「ゲストルーム」としてリビングを活用できるよう、食事やお酒を複数で楽しめるL字型のカウンターをオリジナルで設えました。
装飾性をとことん省き、素材の質感が際立つ空間構成もさることながら、部屋を仕切る扉の色を変えることで、全体メリハリが生まれている点にも着目したいところ。印象的なグレー&ネイビーの配色は現地で色合わせとともに塗装を行いました。扉のデザイン性を損なうことなく取り付けた猫用の扉も空間にすっきりと馴染んでいます。
「すっかり猫ものびのび暮らしてます」。引越しを終え、新生活を始めたNさん夫妻から届いた言葉には、愛猫との新生活への期待が滲んでいます。