February 2016
コードスタイル おススメの映画紹介。
『キャデラック・レコード』
真っ青な空の晴天とは裏腹に、本格的な寒さが肌をつく2月。
R&Bがうっすら流れる事務所で、学生の頃に燃えるように聞いていたR&Bが懐かしく聴こえてきます。少し感傷的な気分にも浸れる季節には、うってつけのAnita Baker のSweet Loveが身体に懐かしい今日この頃。
今月のご紹介MOVIEは、50年代から60年代に活動し、のちの音楽シーンに多大な影響を与えたシカゴの伝説的ブルース・レーベル“チェス・レコード”の盛衰を描いた『キャデラック・レコード』
マディ・ウォーターズを中心にチャック・ベリー、エタ・ジェイムズら所属アーティスト達とポーランド系移民のユダヤ人レナード・チェスが、当時はまだレイス・ミュージックと呼ばれ差別されていた黒人音楽に目を付け、商才を発揮して彼らを音楽シーンのメインストリームへと押し上げていく様子を描いた映画です。
1950年代はアメリカ文化の黄金期。アメリカンビンテージが好きな方にはたまらない時代背景。50年代のアメリカを最も彩った象徴的存在は、やっぱりElvis Presley。 そんなPresleyが愛用していたキャデラック。キャデラックは成功の象徴だったんですね。そんな時代背景を知ったうえで『キャデラックレコード』を観るとチェスレコードの栄枯盛衰が分かり易くなると思いますし、ラストのシーンが感慨深くなると思います。
実際の人となりはわかりませんがジェフリー・ライト演じるマデイウオーターのあの豪快なギター&ボーカルのサウンドとは裏腹な寡黙でちょっと遠慮がちな性格に、人間味を感じます。
アンプリファイド・ハープ(ハーモニカをアンプに通して音を分厚く強くするスタイル)を発明した『リトル・ウォルター』との出会いのシーンやオオカミのように唸る『ハウリン・ウルフ』。ブルースマン以上の華やかな成功を手にする『チャックベリー』。そして遊び人だった白人の父親と商売女だった黒人の母親の間に生まれたという素性に、いつも苛立ったり強がったりして混乱の中に生きていたビヨンセ演じる『エタ・ジェイムズ』。アーリーソウル・バラードの傑作「At Last」を歌い上げたビヨンセは正に圧巻の歌唱力。思わず息を飲んでしまう程素晴らしい歌唱力です。
ただエタ・ジェイムズ本人の「At Last」も是非聞いてみてくださいね。https://www.youtube.com/watch?v=S-cbOl96RFM底から湧き出る低音。ハスキーな声でバラードを歌い上げる歌唱力。この映画を見て、「At Last」を聞くと、音楽の力を感じずにはいられません。
当初チェス役に予定だったマット・ディロンからエイドリアン・ブロディに変更されたキャスティング。この配役もポーランド系ユダヤ人の画家を父親にもつエイドリアン・ブロディだけに今思えば絶妙なキャスティングですね。
少し長くなりましたが最後にこのシーン!!
そうです!!ローリングストーンズが出てくるんです!!ストーンズのバンド名はマディ・ウォーターズの曲名から採られた事は有名です。
実は、このストーンズの登場が、この映画のラストを締めくくる最後で伏線として効いてくるんです。脚本・ストリー構成の素晴らしさも同時に感じるこの映画。1950年代はアメリカの黄金期。経済や文化、ファッションや芸術面でもまさに独り勝ちのアメリカを舞台に、くすぶる人種差別や栄光を夢見る人々を描いた『キャデラクレコード』。是非ご覧くださいね。そして音楽に酔いしれてください。