在りし日の面影が宿るモダンな回廊

春日市F邸戸建リノベーション

かつて両親が暮らした瓦葺き2階建ての家屋が、新たな内装へと生まれ変わりました。場所は福岡県春日市。第一種低層住居専用地域に建つ家とあり、建て替えやリフォームをおこなうにも様々な制約があるなか、両親からこの家を譲り受けた娘のFさん(夫・子2人)はフルリノベーションを決意しました。

一家の「食」を支えるキッチンを起点に、ダイニング・リビングへと続く家族団らんのための“一大スペース”はおよそ20帖。メインフロアにこれほどの広さを確保しながらも、収納棚付きのパントリーや階段下収納など、区画を賢く利用した点に加え、アプローチを挟んだ奥の部屋は壁面部を有効活用しウォークインクローゼットを設置しました。また、旧家の面影を残すインナーバルコニーは、かつて縁側として機能した場所。居室と戸外をつなぐ“回廊”(通路幅約150センチ!)としての役目はそのままに、床をタイルで構成したことで極めてモダンな雰囲気が生まれました。一方、光を取り込む大きな木枠のガラス扉を、往時の姿のまま残した点にもFさんの旧家への想いと粋なセンスが見え隠れします。

さらに、インナーバルコニー天井から下げたコの字型アイアンポールを使えば“回廊”はたちまち物干しスペースとしても機能。動線や機能面を重視した間取りによって使い勝手が増した家。各部の色や素材といったデザイン部分はコードスタイルの施工実例集をもとに進めたFさん。例えばドレッシングルームに設けた白タイル構成の洗面化粧台は「WORKS #61」がベースとなって実現しています。あらゆる生活スペースに戸建てならではの“ゆとり”を感じさせる大空間。愛する2人のお子さんの成長もさることながら、これからFさんは新たな時を刻み始めた家を、ご両親の想いとともに大切に育んでいきます。

すべての空間に妥協なし。快適性をデザインで体現

直方市T様邸リノベーション

建設会社を営むお父様が建てたつくりのいい一軒家。娘であるAさんは、自身の結婚を機にこの家を譲り受けることになりました。

従来、自分が住み続けてきた実家にどう手を加えていくか。また、お酒や洋服、車など多趣味なご主人の意見も踏まえリノベーションに着手しました。

今回のケースの場合、土地代を要しない分、大胆な間取りの変更やデザインの追加が可能とあり、夫婦それぞれの好みをバランスよく配分できることは大きなポイントでした。とはいえ、空間全体の雰囲気に影響する床や壁は色数を最小限にし、素材感のまとまりを重要視。

一方、共働きのライフスタイルに合わせ、家事も効率的に回せるよう、隅の壁側にあったキッチンはリビング側に向きを変え、パントリーを備える広々としたスペースを確保。洗面室やトイレなどの水回りも同じく面積を拡張しました。

開放感もさることながら、T様邸らしさを引き立てる最大の魅力は、床材やタイルづかいの豊富さです。とりわけ床材はリビングに敷き詰めたデザイン性の高いヘリンボーンに加え、ゲストスペースにと設けた一階洋室にはヘキサゴンパーケットを採用。薄いトーンの緑の壁とも絶妙な相性を感じます。

さらに、キッチンや洗面所、トイレで異なるタイルの他、元々コードスタイルのインダストリアルな施工が好みだったご主人の要望によって、リビング一角の共有デスクゾーンは壁面をレンガでアレンジ。エントランスのシューズボックスや2階に設けたウォークインクローゼットを含め、互いの生活品や趣味道具を美しく整頓できるオリジナルの造作物の新設も夫婦の妥協なきこだわりといえます。

昨今、家で過ごす時間の重要性が高まるだけに、T邸には「自分にとって快適な空間とは何か」を見つめ直すヒントが隠れています。