美しい都市区画を眼下に収める開放的なバルコニーからは、爽やかな風がリビングに季節を運ぶ。Mさん親子が南区三宅の新築マンションに越してきたのは2019年1月。家族の“新生活”は文字どおり始まったばかりだ。それまでの賃貸マンション住まいから一転、分譲マンション購入に踏み切ったきっかけは、家族構成の変化と将来的な備えだった。
「夫が他界し、従来の間取りでの暮らしがライフスタイルに合わなくなってきたことが一つ。また、家賃も決して無視できない額だったので、将来の資産という意味でも中古物件も視野に購入を検討し始めたんです」。自己資金との兼ね合いも踏まえ、初めて臨む分譲物件リサーチ。「いろんな選択肢を」との思いで内覧した物件の数は3カ月で6カ所以上に及んだ。「照葉(東区)から百道、西新、荒江など、エリアを特定せずに探しましたね」。そうして出会ったのがこの物件だった。
モデルルーム見学の際、モダンな間取りを前に、「“なんとなく”生活のイメージがわいた」とMさん。しかし、それは“その場のイメージ”に過ぎなかった。「購入してみてわかったんですが、モデルルームはあくまで“良い見本”であって、実際の空間とは配置も設えも大きくズレがあったんです…」。
モデルルームと実際の部屋とのギャップは「リビングの狭さだった」と語るMさん。小さな部屋で仕切られた4LDKの間取りをはじめ、玄関両脇に配置された靴箱などに違和感を抱いていた。なにせ居住者は2人だ。「リビングだけでもリフォームして拡張しようと考えたんです」。そこで相談を持ちかけたのがコードスタイルだった。
間取りを一部分だけ“リフォームする”という意図を伝えた際、返ってきた答えは意外にも「NO」だった。「最初はびっくりしましたよ(笑)。説明を聞くうちに、一カ所だけ手を加えるリフォームと、空間全体の調和をはかるリノベーションではまったく違う仕上りになることがわかったんです」。不必要な部屋を減らすことで生まれる開放的なリビングとともに、Mさんは玄関からリビングへと続くメイン動線も一新することにした。「当初の予算だとせいぜいフローリングくらいが限度かなと思いましたが、天井にまで手を加えてもらえたことは満足ですね」。
また、暮らしの中心に据えるリビングのリノベーションテーマは「生活感のなさ」とMさん。冷たささえ感じるモルタル調のダークなフローリングが象徴するように、四方の壁も、むき出しの天井も同じトーンで統一した。
「生活感のない空間」は、単なる好みによるものではない。「以前から所有していた家具や絵画が映える空間を考えると、必然的にモノトーンがいいということになって。一部分の壁面の色を変えてみようかとも思いましたが、コードスタイルさんの提案で統一することにしました」。その甲斐あって、北側の壁面に掛けた大きな絵(ファッションビジュアル)が、空間に自然なコントラストをもたらしている。
また、生活感が生じやすい収納面は、小物(生活道具類)を“隠せる”機能的な家具をコードスタイルにオーダー。「壁掛けテレビの下に配置した滑車付きの収納ボードは、トランクのような仕様に加えて、所々にアンティークパーツを使っています」。
一方、カフェのようなキッチンにも調理道具や食器などの物がほとんど目につかない。「すべて隠れるような戸棚も良かったけれど、家電やグラスなどの一部はあえて見せるオープン型にしました」。ダイニングを兼ねるリビング。また、その境界を感じさせない色調の統一感。それがMさんの理想とする空間だった。「将来への備え(資産)という側面もあるけれど、こうして住むと、手放したくない!という気持ちの方が強くなっています」。