西区小戸の住宅地。都心までつながる幹線道路が近くを走っているとはいえ、ゆったり流れる小川や点在する緑地の効果も相まって、辺りは閑静という言葉がしっくりくる住環境だ。
Yさん一家が同地での暮らしをスタートしたのは2018年9月のこと。転居のきっかけは夫婦生活4年目に授かった第一子の存在だった。「以前は薬院の賃貸マンション住まいでした。周囲へのアクセスという利便性ではこれ以上ない場所でしたが、車の交通量も多いうえに、夜中まで騒がしいのでまともに窓すら開けられない。そんな環境で子育てできるかというと正直、疑問でしたね」。
約3カ月にわたる物件探しはこうしてスタートした。当初、新築から中古まであらゆる可能性を検討していたというYさん。家族が理想とする空間を実現するために「リノベーションしか頭になかった」と断言するほど、“自分たちの手をどれほど加えられるか”を条件に据えた。
Yさん自ら得た物件情報の中から、不動産仲介も担うコードスタイルの担当者とともに10カ所の内覧を実施。リノベーションのイメージを互いに共有しながら物件を絞り込んだ。結果、Yさん一家は新築に近い(竣工から2年)現在の自宅である分譲マンションを選択した。
内装イメージは着工前から明確にしていたというYさん。中でもこだわった点が機能美だ。「カッコいいと思える空間はもちろんですが、使いやすくなければ意味がない。それは自分の趣味である家具収集の際の目線に近いかもしれません」。
3人住まいとしては決して広くない68平米の面積をいかに活用できるか、元は小さな部屋が隣り合っていた3LDKの間取りを2LDKに変更したのも必然だった。
「洋室とリビングの間にあった扉を取り外して生まれたスペースによって、寛ぎの余白が作れたと思います。加えて子どもが自由に動き回れるし、妻の家事動線の確保もできましたね」。さらに、キッチンと連動するダイニングカウンターを設置したのも、リビングをより広く使うための工夫だった。
「カウンターとキッチンの間の立ち上がりにサブテーブルとして使える奥行きをつけたことで、料理の受け渡しもスムーズになりました」。立ち上がりの壁面にはアイコニックなタイルを配置。コードスタイル担当者からの粋な提案だったという。「料理しながら子どもの様子を観察できる点も安心ですね」。とはYさんの奥様。常に子どもの行動を気にしながら家事をしていた奥様にとって、キッチンからリビングを広く見渡せることは大きな魅力だった。
Yさんが考える機能美は他にもある。リビングのバルコニー側の天井からコの字型に吊り下げたアイアン製のバーもその一つだ。「洗濯物の出し入れの際、一時的な保管場所として使えるだけでなく、部屋干しもできるし、来客時のコートハンガーとしての役割も果たしてくれます」。一方、リビングの壁には珪藻土を採用。「自然素材を用いたかったんです。壁紙だと無機質になりがちなので、部分的にでも手塗りの質感を加えたら雰囲気を出せるかなと。無垢(オーク材)のフローリングとのバランスも考慮しました」。
さらに、Yさんは玄関の収納にもこだわった。「備え付けの棚の収納スペースの比率を変えたんです。元は下まであった固定棚を取り外し、折りたたみ自転車を入れられるようにし、均等にあった3つの仕切りを大小の2つに分けたことも使い勝手が良くなったポイントですね」。
約2カ月の工期をYさんはこう振り返る。「機能もデザインもイメージに限りなく近い空間に仕上がりました。早くから打合せできたこともそうだし、数々のリノベーション実績のあるコードスタイルさんだから、対応力と再現力があったという点が大きいですね」。完成したての温かなリビングから家族の新しいライフスタイルは形作られていく。